遺言(2)

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遺言の方式

遺言の方式には普通方式遺言と特別方式遺言があります。

特別方式遺言

普通方式遺言が不可能な場合の遺言方式。普通方式遺言が可能になってから6か月間生存した場合は、遺言は無効となります(983条)。

★危急時遺言

(1)一般危急時遺言

疾病や負傷で死亡の危急が迫った人の遺言形式(976条)。証人3人以上の立会いが必要。証人のうちの1人に遺言者が遺言内容を口授します。遺言不適格者が主導するのは禁止されています。口授を受けた者が筆記をして、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、または閲覧させます。各証人は、筆記が正確なことを承認した後、署名・押印します。20日以内に家庭裁判所で確認手続を経ない場合、遺言が無効となります。

(2)難船危急時遺言

船舶や飛行機に乗っていて死亡の危急が迫った人の遺言方式(979条)。証人2人以上の立会いが必要。証人の1人に遺言者が遺言内容を口授します。口授を受けた者が筆記をして、他の証人が確認します。各証人が署名・押印します。遅滞なく家庭裁判所で確認手続を経る必要があります。

隔絶地遺言

(1)一般隔絶地遺言

伝染病による行政処分によって交通を断たれた場所にいる人の遺言方式(977条)。刑務所の服役囚や災害現場の被災者もこの方式で遺言をすることが可能。警察官1人と証人1人の立会いが必要。家庭裁判所の確認は不要。

(2)船舶隔絶地遺言

船舶に乗っていて陸地から離れた人の遺言方式(978条)。飛行機の乗客はこの方式を選択することはできません。船長又は事務員1人と、証人2人以上の立会いが必要です。家庭裁判所の確認は不要です。

証人・立会人の欠格者

証人・立会人は以下の欠格者以外の者なら誰でもなることができます(974条)。

  1. 未成年者
  2. 推定相続人、受遺者及びそれらの配偶者、並びに直系血族
  3. 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

共同遺言の禁止

遺言は2人以上の者が同一の証書ですることができません(975条)。2人以上の者が同一の証書で遺言をすると各人が自由に撤回することが難しくなり、故人の最終的な意思の確認が困難になるためと解されています。夫婦が同一の証書に連名で遺言する場合などが共同遺言として無効とされます。

遺言の作成における諸問題

自書
自筆証書遺言については全文の自書が必要です(968条1項)。
日付
普通方式遺言では日付が有効要件とされています(968条1項・970条1項)。 遺言の日付は「平成15年吉日」などの年月日が特定できないものは無効ですが(最判昭和54年5月31日民集33巻4号445頁参照)、「還暦の誕生日」、「65歳の誕生日」、「平成15年大晦日」など、年月日が特定できるものなら有効です。しかし、できる限り混乱防止のために普通に年月日を記載するほうが望ましいといえます。特別方式遺言において日付の記載は遺言の有効要件とはされず、日付が正確さを欠いていても特別方式遺言は無効にはなりません(最判昭和47年3月17日民集26巻2号249頁参照)。
氏名
遺言者が通常使用している通名等でも、遺言書を書いた者が特定できる場合は有効です(大判大正4年7月3日民録21輯1176頁参照)。
押印
拇印でよいとする判例があります(最判平成元年2月16日民集43巻2号45頁)。
封印
秘密証書遺言については封緘と封印が必要(970条1項2号)。 遺言に封印のある場合は家庭裁判所に提出して検認を受けるときに、相続人(もしくはその代理人)の立ち会いがなければ開封できません(1004条3項)。ちなみに検認を経なくても遺言は当然には無効とはなりませんが、過料の制裁を受ける可能性があります(1005条)。

相続人の欠格事由

遺言に関し次の者は、相続人の欠格事由になります(891条)。

(1)詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者。

(2)詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者。

(3)相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者。

遺言の効力発生時期

遺言は遺言者の死亡の時からその効力を生じます(985条1項)。遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生じます(985条2項)。

遺言の無効・取消し

遺言も法律行為の一種ですから、他の法律行為と同じように意思能力のない者による遺言や公序良俗(90条)に反する遺言は無効とされます。その一方で、遺言は法律行為ではあるものの最終意思の表示であるという点で他の法律行為とは性質が異なることから、取消しについても異なる扱いを受け、本人は自由に遺言を撤回することができるものと規定されています(1022条)。また、遺言は代理に親しまない法律行為ですから、制限行為能力者に関連する規定の適用は排除され(962条)、制限行為能力者が遺言をする場合であっても、遺言を行う本人に遺言能力があれば保護者はその遺言に関して同意権や取消権などを行使できません。遺言をした制限行為能力者本人が遺言を取り消したい場合には1022条により取り消すことになります。

遺贈

遺言者は包括または特定の名義でその財産の全部または一部を処分することができます(964条本文)。これを遺贈といいます。ただし、遺留分に関する規定に違反することはできません(964条ただし書)。

遺言の執行

言書の検認・開封

遺言の保管者や発見者は相続開始を知った後、遅滞なく家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません(1004条1項)。検認は遺言書の存在を確定し現状を保護するために行われる手続でありますが、遺言書の有効・無効という実体上の効果を左右するものではありません。なお、公正証書遺言については検認を要しません(1004条2項)。封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いがなければ、開封することができません(1004条3項)。

遺言執行者

遺言により遺言執行者が指定されている場合または指定の委託がある場合は、遺言執行者が就職し、直ちに任務を開始します(1006条・1007条)。子の認知・相続人の廃除およびその取り消しを除き、遺言執行者がなくても相続人が遺言の内容を実現することが可能ですが、手続を円滑に進めるためには、遺言執行者を指定しておく方が良いでしょう。遺言執行者は、未成年者及破産者以外であれば相続人でも成れ(1009条)、いないときは、家庭裁判所は利害関係人の請求によって、遺言執行者を選任することができ(1010条)、遺言に定めた報酬または家庭裁判所の定める報酬を受けます(1018条)。

遺言執行者の任務

遺言執行者は相続人の代理人とみなされ(1015条)、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができません(1016条)。遺言執行者が数人いる場合には、その任務の執行は、原則として過半数で決すしますが、単独でも保存行為をすることができます(1017条)。不動産の登記について、遺贈の場合は遺言執行者が登記義務者となりますが、「相続させる」遺言の場合は前述の判例により、相続開始時に承継されたとみなされ、相続人が単独で登記することができるため遺言執行者は関与しません。

遺言執行業務の業務

遺言の執行は業務として法令で規定されているのは弁護士と司法書士です。また、信託銀行でも遺言信託と称して遺言執行サービスを提供しています。なお、行政書士は業務として行っている方もいますが、法令上行政書士の業務とされているわけではなく、一般人として受けているに過ぎません。

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